古物商の欠格事由とは?

どれかひとつでもに当てはまるものがあると古物商になることができませんよ、というものが「欠格事由」と呼ばれているものです。

このページをお読みいただくと、その欠格事由というものがどういうものかが分かります。

目次

古物営業法第四条

欠格事由は「許可の基準」という見出しの古物営業法第四条に記載されています。

まずそこに記載されている内容をご案内した後にそれぞれの項目を詳しく見ていきます。

第四条に記載されている内容は以下の通りです。

  1. 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  2. 禁錮以上の刑に処せられ、又は古物営業法第31条に規定する罪若しくは刑法第235条、第247条、第254条若しくは第256条第2項に規定する罪を犯して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
  3. 集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当る違法な行為で国家公安委員会規則で定めるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者
  4. 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第12条若しくは第12条の6の規定による命令又は同法第12条の4第2項の規定による指示を受けた者であって当該命令又は指示を受けた日から起算して3年を経過しない者
  5. 住居の定まらない者
  6. 古物営業法第24条第1項の規定によりその古物営業の許可を取り消され、当該取り消しの日からの起算して、5年を経過しない者(許可を取り消された者が法人である場合においては、当該取り消しに係る聴聞の期日及び場所が公示された日前60日以内に当該法人の役員であった者で当該取り消しの日から起算して5年を経過しないものを含む。)
  7. 古物営業法第24条第1項の規定による許可の取り消しに係る聴聞の期日及び場所が公示された日から当該取り消しをする日又は当該取り消しをしないことを決定する日までの間に第8条第1項第1号の規定による許可証の返納をした者(その古物営業の廃止について相当な理由がある者を除く。)で、当該返納の日から起算して5年を経過しない者
  8. 心身の故障により古物商又は古物市場主の業務を適正に実施することができない者として古物営業法施行規則で定める者
  9. 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者。ただし、その者が古物商又は古物市場主の相続人であって、その法定代理人が前各号及び第11号のいずれにも該当しない場合を除くものとする。
  10. 営業所又は古物市場ごとに第13条第1項の管理者を選任すると認められないことについて相当な理由がある者。
  11. 法人で、その役員のうちに第1号から第8号までのいずれかに該当するものがある者

続いてそれぞれの項目について解説します。

第一号(破産)

古物営業法第四条第一号には次のように書かれています。

「破産手続開始の決定()を受けて復権を得ない者(

 

破産手続開始の決定破産手続開始の決定とは自己破産の申し立てをした者に対して破産手続きを開始することを裁判所が決定することです。

 

復権を得ない者:復権とは破産手続の開始によって破産者に課せられた権利の制限を消滅させることで、「復権を得ない者」とはまだその権利の制限が消滅していない状態にある方のことを言います。

 

【チェックポイント】

自己破産をされたが復権を得ているかご不明な方は、自己破産の申し立てを依頼した弁護士又は申し立てをされた裁判所にご確認下さい。

第二号(禁固刑・罰金刑)

古物営業法第四条第二号には次のように書かれています。

「禁錮以上の刑()に処せられ、又は古物営業法第31条()に規定する罪若しくは刑法第235条、第247条、第254条若しくは第256条第2項に規定する罪()を犯して罰金の刑()に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日()から起算して5年を経過しない者」

 

禁固以上の刑:禁固刑とは刑務作業が義務付けられていない身柄を拘束される刑のことです。また禁固以上の刑とは「禁固刑、懲役刑、死刑」を指します。禁固以上の刑については根拠となる法律を問いません。

 

古物営業法第31条に規定する罪は下記の4つです。

  1. 無許可で古物商・古物市場・古物競り売りあっせん業を行うこと。
  2. 偽りその他不正な手段によって古物営業許可を取得すること。
  3. 名義貸しをすること。
  4. 営業停止の命令に背くこと。

刑法第235条、第247条、第254条、第256条第2項に規定する罪とは次の通りです。

  1. 第235条 窃盗罪
  2. 第247条 背任罪
  3. 第254条 遺失物等横領
  4. 第256条第2項 盗品譲受け等

罰金刑:古物営業法第31条、刑法第235条、第247条、第254条、第256条第2項の規定に違反したことにより課される罰金刑のことを指しています。交通違反などによる罰金刑は含みません。

 

執行を受けることがなくなった日:仮釈放後の残刑期間が経過した日、刑の時効が成立した日、恩赦により刑の執行を免除された日々などのことです。

 

【チェックポイント】

  1. 禁固刑に処せられたことがありますか?
  2. 罰金刑を課されたことがありますか?
  3. 罰金刑を課されたことがある場合、それは古物営業法又は刑法に規定されている罪によるものですか?
  4. 上記「1」又は「2及び3」に該当する場合、刑を処せられその執行が終わってから5年経過していますか?又は執行を受けることがなくなった日(上記⑤)から5年を経過していますか?

第三号(暴力的不法行為)

古物営業法第四条第三号には次のように書かれています。

 

「集団的に、又は常習的()に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で国家公安委員会規則で定めるもの()を行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由()がある者」

 

「集団的に、又は常習的に」「~を行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者」とは次のような方を指します。

  1. 暴力団員(暴対法第2条第6号に規定する暴力団員)
  2. 暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
  3. 暴力団員以外の犯罪組織の構成員で、当該組織の他の構成員の検挙状況等(犯罪性、反復性)から見た当該組織の性格により強い「ぐ犯性将来犯罪を行う可能性)」が認められる者
  4. 過去10年間に暴力的不法行為等(古物営業法施行規則第1条)を行ったことがあり、その動機、背景、手段、日常の素行等からみて強い「ぐ犯性」が認められる者

暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で国家公安委員会規則で定めるもの」とは古物営業法施行規則第1条に記載されている違法行為を指します。

 

【チェックポイント】

暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者に該当するかについては申請者名及び生年月日等を暴力団対策主管課に照会することによって確認されます。

また「ぐ犯性(将来犯罪を行う可能性)」については、申請者の本籍地の市区町村長に対する前科照会の他、必要に応じ、部内資料、家族又は知人に対する聞き込みによる日常の素行調査等により、総合的に判断されます。(警察庁丙生企発第165号)

第四号(暴力団対策法)

古物営業法第四条第四号には次のように書かれています。

 

「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(以下 暴対法と呼びます。) 第12条()もしくは第12条の6の規定()による命令又は同法第12条の4第2項の規定()による指示を受けたものであって、当該命令又は指示を受けた日から起算して3年を経過しないもの」

 

 暴対法第12条:誰かが指定暴力団員に対し、暴力的要求行為(暴対法第9条1号~27号に書かれている行為)をすることを要求したり、依頼したり、唆したりした場合で、それらを反復するおそれがある場合に、指定暴力団員等に対してそれらを防止するために必要な事項を命ずることができるという内容(第一項)と暴力的要求行為を受けた人の生活の平穏又は業務の遂行の平穏が害されていると認める場合には、それらの行為をする人に対し、それらの行為を中止することを命じ、中止されることを確保するために必要な事項を命ずることができる。(第二項)という内容のことが書かれています。

 

暴対法第12条の6:上記暴対法第12条が「暴力的要求行為」について記載されているのに対して、暴対法第12条の6は「暴力的要求行為」について暴対法第12条と同様の内容が記載されています。準暴力的要求行為とは指定暴力団員以外の者が暴力団の威力を示して」暴力的要求行為(暴対法第9条に記載されている27類型)を行うことです。

 

暴対法第12条の4第2項:指定暴力団員による準暴力的行為の要求、依頼、唆し、助けにより準暴力的要求行為が行われるおそれがあると認められる場合は、その行為をおこなおうとする者に対して準暴力的要求行為をしてはならない旨を指示をする。という内容が書かれています。

 

上記条項に記載されている命令又は指示を受けてから3年を経過していない場合は欠格事由に該当します。

 

【チェックポイント】

前述の第三号と同様、申請者の氏名及び生年月日等を暴力団対策主管課に照会することにより確認されます。

 

第五号(住居)

古物営業法第四条第五号には次のように書かれています。

 

 「住居の定まらない者」

 

こちらの項目は下記のような方を指します。

  1. 住民登録がない方
  2. 住民登録はあるが、登録上の住所にお住まいでない方

 

ただし、特別な理由により登録上の住所にお住まいでない場合、その理由によっては理由書等を提出することにより申請可能な場合があります。

 

【チェックポイント】

住民基本台帳法上、住所の移転から14日以内に住民票の住所を変更していただく必要があります。

第六号(古物商許可の取り消し)

古物営業法第四条第六号には次のように書かれています。

 「「第24条第1項の規定()」によりその古物営業の許可を取り消され、当該取り消しの日から起算して5年を経過しない者(許可を取り消された者が法人である場合においては、当該取り消しに係る「聴聞の期日及び場所が公示された日()」前六十日以内に当該法人の役員であった者で当該取り消しの日から起算して5年を経過しないものを含む。)」

 

第24条第1項:古物営業法第24条第1項のことでそこには次のようなことが書かれています。

「古物商又は古物市場主又はこれらの代理人等が古物営業に関して、古物営業法、古物営業法に基づく命令、他の法令の規定に違反した場合において、盗品等の売買等の防止、盗品等の速やかな発見が著しく阻害されるおそれがあると認められる時、又は古物商又は古物市場主が古物営業法に基づく処分(指示を含む)に違反したときは、古物営業の取り消し又は6か月を超えない範囲で期間を定めて、その古物営業の全部もしくは一部の停止を命ずることができる

 

聴聞の期日及び場所が公示された日:聴聞」とは行政手続法に規定されている手続きの一つで、行政庁が不利益処分をする場合にその処分の対象者(以下「名あて人」といいます。)に与える意見陳述の機会のことです。

この場合の不利益処分は「古物営業の取り消し」のことを指しますが、古物営業の取り消しを行う前に、公安委員会が、名あて人に対して聴聞の「期日」と「場所」を書面によって通知すると同時に、公安委員会の入り口の掲示板に貼り出します。

その貼り出された日が「公示された日」に当たります。

 

【チェックポイント】

  1. 古物営業を取り消されたことがありますか?
  2. 取り消されたことがある場合は取り消されてから5年経っていますか?
  3. 取り消されたのが法人である場合はその法人の役員でしたか?
  4. 取り消された法人の役員であった場合、取り消しに係る聴聞の期日及び場所の公示日の前60日以内に役員でしたか?

第七号(取り消し前の許可証の返納)

古物営業法第四条第七号には次のように書かれています。

「第24条第1項(前項をご参照下さい。)の規定による許可の取り消しに係る聴聞の期日及び場所が公示された日(前項をご参照下さい。)から当該取り消しをする日又は当該取り消しをしないことを決定する日までの間に第8条第1項第1号の規定)による許可証の返納をした者(その古物営業の廃止について相当な理由がある者()を除く。)で、当該返納の日から起算して5年を経過しないもの」

 

第8条第1項第1号の規定:古物営業法第8条第1項第1号のことで、そこには次のようなことが書かれています。

「古物営業を廃止したときは、遅滞なくその主たる営業所又は古物市場の所在地を管轄する公安委員会に許可証を返納しなければならない。」

 

古物営業の廃止について相当な理由がある者:古物営業法等の法令違反により取り消されようとする状況での営業の廃止であるため、相当な理由がある考えられる具体的なケースはあまり考えられせんが、例えば、古物商許可を持っている法人が、やむを得ず倒産する場合などが挙げられます。

 

【チェックポイント】

許可を取り消されてしまうと5年間許可を取得することができなくなってしまうため、取り消し前に返納をし、取り消しを免れようとする行為をこの号で欠格事由にしています。

第八号(心身的故障)

古物営業法第四条第八号には次のように書かれています。

 

「心身の故障により古物商又は古物市場主の業務を適正に実施することができない者として国家公安委員会規則で定めるもの()」

 

国家公安委員会規則で定めるもの:古物営業法施行規則第1条の2のこと指しており、そこには次のように書かれています。

精神機能の障害により古物商又は古物市場主の業務を適正に実施するに当たって必要な認知、判断又は意思疎通を適切に行うことができない者

これに該当するかどうかは自己申告で良いのですが、古物営業法第19条の2に「古物商が古物営業に関し行った行為は、行為能力の制限によって取り消すことができない」という条文があり、それによってその申告内容に責任を負わせる構造になっています。

 

【チェックポイント】

2019年12月までは上記欠格事由の代わりに「成年被後見人もしくは被保佐人または破産者で復権を得ないもの」という項目があり、この項目の前半部分の「成年被後見人もしくは被保佐人でないこと」を証明するために「登記されていないことの証明書」の提出を求められていたのですが、成年被後見人等法(正式名称:成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律)が施行されたことにより、この条文の前半部分が削除され「破産者で復権を得ないもの」という部分だけが残り、現在の古物営業法第4条第8号と古物営業法第19条の2(行為能力の制限による取り消し不可)が追加されたという経緯があります。

第九号(未成年者)

古物営業法第四条第九号には次のように書かれています。

 

「営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者()。ただし、その者が古物商又は古物市場主の相続人()であってその法定代理人()が前各号及び第十一号のいずれにも該当しない場合を除くものとする。」

 

営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者:2022年4月1日までは婚姻により未成年であっても成年者と同一の行為能力を有するとみなされるケース(成年擬制)があったのですが、現在ではそれが廃止され、単に18歳未満の未成年者のことを指します。

 

古物商又は古物市場主の相続人:「未成年者という括りの中での」相続人は主に「子供」を指します。子供がいない場合は「兄弟姉妹」、兄弟姉妹が死亡していて甥姪がいる場合は「甥姪」になります。

 

法定代理人:「未成年者という括りの中での」法定代理人には次の2パターンがあります。

親権者:申請者が18歳未満の場合に本人に代わって身分上及び財産上の管理保護・教育を内容とする権利義務を有するものを指します。

未成年後見人:申請者が18歳未満の場合で、親権者がいないとき、又は親権者が管理権(財産に関する権限)を有しないときに後見となるもの指します。

 

【チェックポイント】

未成年者が古物商又は古物市場主の相続人として古物商になることができる場合であっても、未成年者は古物商の管理者にはなることができないため、管理者にはその法定代理人などの成年者を選任していただく必要があります。

第十号(管理者)

古物営業法第四条第十号には次のように書かれています。

 

「営業所又は古物市場ごとに第13条第1項(の管理者を選任すると認められないことについて相当な理由(があるもの」

 

第13条第1項:古物営業法第13条第1項のことで「古物商又は古物市場主は、営業所又は古物市場ごとに、当該営業所又は古物市場に係る業務を適正に実施する責任者として、管理者一名を選任しなければならない」と書かれています。

 

相当な理由:管理者して選任しようとする者を具体的に決定していない場合や、管理者として選任しようとする者が当該営業所又は古物市場に勤務しておらず、又は当該営業所又は古物市場において責任ある職についている者でなく、当該営業所又は古物市場に係る管理者の職務を適切に遂行することが到底期待できない場合などを指します。(平成7.9.11警察庁丁生企発第104号)

 

【チェックポイント】

古物商の管理者はいくつかの条件を満たしている必要があります。

管理者の条件についてはこちらをご覧ください。

第十一号(法人の場合)

古物営業法第四条第十一号には次のように書かれています。

 

「法人で、その役員のうちに第一号から第八号()までのいずれかに該当する者があるもの」

 

第一号から第八号前述の古物営業法第4条の第一号から第八号を指します。

 

【チェックポイント】

ここで注目すべきことは第九号の「未成年者」が含まれていないことです。つまり法人として古物商許可申請を行う場合、役員は未成年者であってもよいということです。

ただし、古物営業法第13条第2項第1号に管理者の欠格事由として「未成年者」が記載されているため、役員が管理者を兼任する場合はその役員は成年者である必要があります。