古物商の営業所とは?

古物商許可における営業所とはどのような場所を指すのでしょうか?

このページをお読みいただくと、どのような場所を古物商の営業所として申請すればよいのかが分かります。

目次

古物営業法上の営業所の定義

古物営業法には古物商の営業所とはこういうものを指しますというような明確な定義は書かれていません。その代わりに、営業所に備え付けておかなくてはならないものや掲示しなくてはならないものなど、営業所に関連する規定がいくつかあり、それらの規定から営業所として申請可能な場所が必然的に決まってきます。

それでは営業所に関連する規定を確認していきましょう。

古物商の営業所に関連する規定

①標識の掲示(古物営業法第12条)

古物営業法第12条には「古物商又は古物市場主は、それぞれの営業所若しくは仮設店舗又は古物市場ごとに公衆の見やすい場所に、国家公安委員会規則で定める様式の標識を掲示しなければならない」と書かれています。

通称「古物商プレート」と言われている標識の掲示についての規定です。

この条文により、営業所には古物商プレートを掲げなくてはなりませんのでバーチャルオフィスなど古物営業の実態のない場所を営業所として申請することは必然的にできなくなります。

②管理者(古物営業法第13条)

古物営業法第13条には「古物商又は古物市場主は、営業所又は古物市場ごとに、当該営業所又は古物市場に関わる業務を適正に実施するための責任者として管理者を一名選任しなければならない。」と書かれています。

また警察庁からの通達に「管理者は、営業所に常勤して管理者の業務に従事し得る状態になければならない。」と書かれています。

これらのことから、実際に古物営業を行い、管理者が常勤可能な場所であることが必然的に営業所の条件になります。

つまり、管理者の住まいから通うことができないほど離れている場所や、管理者が常勤することができないバーチャルオフィスなどを営業所として申請することはできないということになります。

③営業の制限(古物営業法第14条)

古物営業法第14条には「古物商は、その営業所又は取引の相手方の住所若しくは居所以外の場所において、買い受け、若しくは交換するため、又は売却若しくは交換の委託を受けるため、古物商以外の者から古物を受け取ってはならない。」と書かれています。

この条文から、例えば古物商が保管場所として利用する倉庫などに売り手が直接古物を持ち込み、その場所で古物商がその古物を受け取る場合は、その保管場所も営業所として申請しなくてはならないということになります。

④帳簿の備え付け(古物営業法第18条)

古物営業法第18条には「古物商又は古物市場主は、帳簿等を最終の記載をした日から三年間営業所若しくは古物市場に備え付け、又は電磁的方法による記録を当該記録をした日から三年間営業所若しくは古物市場において直ちに書面に表示することができるようにして保存しておかなければならない」と書かれています。

帳簿とは通称「古物台帳」と呼ばれているものですが、この台帳を営業所に備え付けていただくか、パソコン上の古物台帳データを「営業所で」「直ちに」プリントアウトしていただくことが可能な状態にしていただく必要があるということが書かれています。

この条文から、台帳を備え付けることができる部屋若しくはロッカーがあること、又は、電磁的方法で台帳を保管する場合は、古物台帳データが保存されているパソコンとそのデータをプリントアウトするためのプリンターがあることが必然的に営業所の条件になります。

そのため必然的にバーチャルオフィスなど住所だけのオフィスや、(ブースタイプなどの場合は)ロッカーやプリンターがないオフィスは営業所として申請できないことになります。

⑤品触れ(古物営業法第19条)

古物営業法第19条の第1項には「警察本部長等は、必要があると認めるときは、古物商又は古物市場主に対して、盗品等の品触れを書面により発すことができる。」、第2項には「古物商又は古物市場主は、前項(第1項)の規定により発せられた品触れを受けたときは、当該品触れに係る書面に到達の日付を記載し、その日から6ヶ月間これを保存しなければならない。」と書かれています。品触れとは「盗難の被害が発生した時にその被害品を古物商に通知するもの」です。品触れが発せられても古物商がそれを受け取ることができないと困ります。また品触れ以外にも法改正に伴う届け出に関するお知らせなど重要な書面が警察から送られてくることがありますので郵便物を受け取ることができる場所を営業所として申請していただく必要があります。レンタルオフィスをご検討される場合はその点は注意が必要です。

⑥変更の届出(古物営業法第7条)

古物営業法第7条には「古物商又は古物市場主は、主たる営業所又は古物市場その他の営業所又は古物市場の名称及び所在地を変更しようとするときは、~中略~届出書を提出しなければならない」と書かれています。

簡単に言うと営業所の所在地が変る場合は届け出が必要ということです。つまり、レンタルオフィスなどの契約内容が短期間で部屋が変るような内容である場合、部屋が変る度に変更届を行なわなくてはいけなくなるため、契約期間が短すぎないか、短い契約期間であったとしても同じ契約内容で自動更新可能な場所を営業所として申請した方が、落ち着いて営業を継続できるということです。

営業所なしでの申請は可能?

古物商許可申請書の中に「営業所なし」という選択項目があります。

このため、インターネット上のみで売買をする場合は「営業所なし」で申請することはできるのではないかというご質問をいただくことがあります。

しかし、「営業所なし」という選択項目は、古物営業法が古くから(昭和24年から)存在するため、昔の事情、例えば家財道具一式を運びながら行商をするような場合を想定したものが、今も残っているだけであり、現在ではその選択項目は形骸化しています。

そのため、インターネット上のみで売買をする場合であってもパソコンを操作する場所を営業所として申請していただく必要があります。

 

尚、石川県では現在(2021年現在)でも「行商有り+インターネット上のみでの取引」の場合は「営業所なし」で申請をすることができ、実際にその内容で何件も許可が下りているとのことです(当事務所もその内容の許可申請を行ったことがあります。)。ただし、その場合であっても申請書上は営業所無しで申請をしているが、警察内部の登録上は申請者の住まいを営業所として登録しているとのことです。

2020年に全国共通の許可になってからもローカルルールは存在するようです。

営業所条件のまとめ

  1. 古物商プレートを掲示できる場所であること。
  2. 管理者が常勤可能な場所であること。
  3. 実際に古物営業を行う場所であること。(パソコンの操作も含みます。)
  4. (売り手の住所又は居所以外で古物商以外から)古物を受け取る場所は営業所として申請する必要あり。
  5. 古物台帳を備えつけることができる場所又は古物台帳が保存されているパソコンを保管できるロッカーとプリンターがある場所であること。
  6. 独占的に使用できる空間があること。(自治体によってはシェアオフィスも可)
  7. 郵便物を受け取ることができる場所であること。
  8. 契約期間が短すぎないこと。
  9. 市街化調整区域など建物を事業目的で利用することが認められていない地域ではないこと。

営業所の具体例

営業所の種類 営業所としての申請の可否  
自己所有の戸建 可 
家族所有の戸建

所有者である家族から承諾を得ている場合のみ

共有の戸建

共有者全員から承諾を得ている場合は

共有者の内、一部が不明な場合や他界していて承諾を得ることができない場合は理由書の提出で対応可能な場合があります。

賃貸物件

(借り主=古物商)

家主又は仲介不動産会社から承諾を得ている場合のみ

賃貸物件

(借り主=古物商以外)

家主又は仲介不動産会社と借り主から承諾を得ている場合のみ

転貸物件
(転借人=古物商)

家主又は仲介不動産会社並びに借主及び転貸人からの承諾を得て居る場合のみ

賃貸物件の間借り

家主又は仲介不動産会社と借り主の両方から承諾を得ている場合のみ

レンタルオフィス

下記条件を満たす場合のみ可

  1. バーチャルオフィスではないこと。
  2. 実際にその場所で古物営業を行うこと。
  3. 独占的に使用可能な空間があること。(独占的に使用可能な固定の部屋又はデスク及びロッカーがあること。)
  4. (台帳をパソコン上で保管する場合)プリンターがあること。
  5. 郵便物の受け取りが可能であること。
  6. 契約期間が短すぎないこと。
  7. レンタルオフィスの貸し主からその場所で古物営業を行うことについて承諾を得ていること。

シェアオフィス

神奈川県など一部の自治体のみ下記条件を満たしていれば可

  1. バーチャルオフィスではないこと。
  2. 実際にその場所で古物営業を行うこと。
  3. 独占的に使用可能な固定のロッカーがあること。
  4. プリンターがあること。
  5. 郵便物の受け取りが可能であること。
  6. 時間ごと又は曜日ごとの契約ではなく、24時間、土日祝日使用可能であり、営業所が継続的に存在すること。
  7. シェアオフィスの貸し主からその場所で古物営業を行うことについて承諾を得ていること。

バーチャルオフィス

不可

公営住宅

不可

その他の注意事項

  1. 法人申請の場合で、法人名ではなく代表者個人名で借りている物件を営業所として申請する場合は、家主又は仲介不動産会社と代表者個人の両方からその法人がその場所を古物商の営業所として使用することについて承諾を得る必要があります。
  2. 市街化調整区域など古物商の営業所を行うことが認められていない地域があります。市街化調整区域等に当らず、古物商の営業所として申請可能な区域かどうか事前に役所にご確認下さい。
  3. 2020年4月の改正法施行後は多くの自治体で営業所に関する疎明資料の提出が必要なくなりましたが、宮城県など一部の自治体では今でも賃貸借契約書や使用承諾書など、営業所に関する疎明資料の提出を求めています。それらの書類が必要どうか事前に管轄の警察署にご確認いただくか当事務所にご相談下さい。
  4. レンタルオフィスやシェアオフィスを古物商の営業所としてご検討される場合は必ず「ご契約前に」管轄の警察署又は当事務所にご相談下さい。ご相談いただく前にご契約をされ、万が一古物商の営業所として申請できないことが判明した場合は責任を負いかねます。

古物商営業所Q&A

居住専用の賃貸物件を営業所として申請することは可能ですか。

居住専用の賃貸物件でも貸し主又は仲介不動産会社から承諾を得ていれば営業所として申請することは可能です。

間借りをしているのですが営業所として申請することは可能ですか。

間借りをしている物件の大元の「借り主」と「貸し主(又は仲介不動産管理会社)」の両方から承諾を得ていれば営業所として申請することは可能です。

現在住んでいる賃貸物件の家主から、その場所を古物商の営業所として使用することの承諾を得ることができなかったのですのが、自宅以外を営業所をして申請することは可能ですか。

ご自宅以外の場所を営業所として申請することは可能ですが、下記条件を満たしている必要があります。
  1. バーチャルオフィスではないこと。
  2. 古物営業を行なってもよい物件であること。
  3. 独占的に使用できる空間があること。(自治体によってはシェアオフィスも可・ご契約前に当事務所にご相談下さい。)
  4. 賃貸物件の場合は契約期間が短すぎないこと。
  5. 郵便物を受け取ることができること。
  6. 自宅から通える範囲内であること。
  7. 古物営業を行なう場合は必ず営業所とする場所に通い実際にその場所で営業を行なうこと。(自宅で古物を受け取ることはできません。)

現在住んでいる賃貸物件の家主から、その場所を古物商の営業所として使用することの承諾を得ることができなかったのですのが、実家を営業所として申請することは可能ですか。

【実家の所有者がご家族である場合】

  1. お住まいの賃貸物件では古物営業は行わず、ご実家で古物営業を行っていただくこと。
  2. 実家を古物営業に使用することについての所有者であるご家族から承諾を得ていること。
  3. お住まいから実家の距離が離れている場合は、ご実家のご家族を管理者に立てていただき、古物営業を行うことも可能ですが、ご家族に古物営業に関する管理監督を行っていただくことになるため、積極的に古物営業に関わっていただく必要があります。

【実家が賃貸物件の場合】

  1. 実家の家主又は仲介不動産管理会社と借り主であるご家族の両方から古物商許可申請者がその場所で古物営業を行うことについて承諾を得ていること。
  2. お住まいの賃貸物件では古物営業は行わず、実家で古物営業を行っていただくこと。
  3. お住まいから実家の距離が離れている場合は、実家のご家族を管理者に立てていただき、古物営業を行うことも可能ですが、ご家族に古物営業に関する管理監督を行っていただくことになるため、積極的に古物営業に関わっていただく必要があります。

レンタルオフィスを古物商の営業所をして申請することは可能ですか?

レンタルオフィスを営業所として申請することは可能ですが、下記条件を満たしている必要があります。
  1. バーチャルオフィスではないこと。
  2. 古物営業を行なってもよい物件であること。
  3. 独占的に使用できる空間があること。
  4. 契約期間が短すぎないこと。(部屋や所在地が変わると営業所の変更届が必要なため)
  5. 郵便物を受け取ることができること。
  6. 完全個室ではない場合はロッカーとプリンターを使用することができること。
  7. 実際にその場所に通って古物営業を行なうこと。
★神奈川県など、自治体によってはシェアオフィスでも申請可能な場合のありますので詳細は営業所管轄の警察本部にご確認下さい。